極東の魔女の襲来
第2話 魔女の煙突
ホグワーツスリザリン女子寮には言わずとしれた“魔女の部屋”というものがある。
魔法魔術学校だというのに“魔女の部屋”。
スリザリンの中でも最北にあるその部屋には寮のいち小部屋だというのに空気を逃がす用の煙突が(勝手に)付けられ、少なくとも週に一度そこから何とも言えない色の煙が流れ、それを嗅ぐとまるごと一日寝込む、という専らの噂だ。
極東の魔女の襲来 No.2
その何とも言えない煙が流れる日。
スリザリン寮談話室は通夜かと思う程深い沈黙に見舞われる。
たまに聞こえる
ぼんっ
とかいう音を除いて。
「・・・ふふふ、おーほっほっほ!」
なんか聞こえるぅー…。
スリザリン生達は一斉に己の耳を塞いだ。
魔女だ。極東からやって来た魔女が笑っている。
この笑い声を聞いたら幸せが八割方逃げてく気がする、というのはスリザリン生共通の思いではあるがそこはスリザリン。
己の高い矜恃にかけて尻尾巻いて逃げるなんてことは許されない。
ましてや汚れた血を畏れるなんてもっての他。
でもそろそろ矜恃とか関係なく逃げていいかな。とか。
セブルス・スネイプはその日、運悪く談話室で本を読んでいた。
いつもの彼なら魔女の煙突活動時には図書室でお気に入りの魔法薬学の本を読んでいる。
矜恃とかそんなものは関係なく。
というか矜恃以前に臭いから退避するとうのは別に逃げではないだろう。あれは公害だ。
と思う彼は中々賢い。
パタリ、と彼は読んでいた本を閉じた。
(―――自室で読んだ方がまだマシか。)
立ち上がる。
距離的に談話室より自室の方があの部屋より遠い。
今更図書室に行くにもそれこそ周りの視線が痛い。
面倒な。
「あら、セブルス・スネイプ。溜め息を吐くと幸せが逃げていくわよ?」
「・・・・・・・・・。」
「そこで顔をしかめるのは私に対して失礼だと思うけれど。」
そう言う割には魔女はクスクスと笑った。
(―――談話室に居続けた方が良かったか。)
セブルスは再度溜め息を吐いた。
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第2話 魔女の煙突
極東の魔女はマグル出身。
2008/01/30
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