極東の魔女の襲来
第3話 悪だくみ
「毒ならそこの二段目の引き出しに入ってるわよ?」
「・・・・・・。」
そんなことは聞いていない。
セブルスは思わず眉間に皺を刻んだ。
というか何故、仮にも女子寮の個室にそんな物騒なものがあるんだろう。(魔女の部屋だから、という答えがコンマ1秒の速さでセブルスの脳内に駆け巡った。)
極東の魔女の襲来 No.3
セブルス・スネイプと・にこれといって特出すべき共通点はない。
いってみれば両人共にスリザリン寮、の同学年。とか、そんくらい。
で、あろうと人は思うであろう。
ところがどっこい。
実はこの2人、入学初日のホグワーツ特急にて同じコンパートメントであった経験があったりする。
ちなみにその時の会話は一分足らずで終了した。
空席の確認 → 名前を言う程度の自己紹介 → 終了
である。
その後、2人はそれぞれ各々の読者に没頭した。
ある意味で気が合うと言ってもいいだろう。
その時のの手にあった本を蛇足までに言っておけば『野草に混じる毒草』。
世も末である。探す気か。
そんなこんなで不覚にもセブルス・スネイプはにとって、ホグワーツに来て初めて会話した相手ということになる。
それがどうしたと普通ならば思うのであろうが落ち着いてよく考えろ。
事は・に及ぶ。
彼女を普通と括ろうとする方が間違いというものだ。
元来、己の趣味に没頭する余り周りが全く見えなくなる女、・。
蛇寮のマグルということも相まってか彼女と普通に会話する相手は幻の魚に出会う確率だ。
どちらかと言えば彼女の性質がおもっくそ人を遠ざけている原因なのだが彼女は微塵も気にしない。
何故って自分の探究心の方が何よりも大事だなんてことを真顔で豪語できるから。
「毒なんか入ってないって言ってるのよ。そんな親の敵でも見るように睨んでなくとも何も出やしないわ。」
はぁ、と一つ溜め息を吐きつつ、は湯のみの茶をズズッと啜る。
誰もが羨むホグワーツの食卓だがそこに日本食は無い。皆無。
そんななかで緑茶などあるわけもなく、自身がホームシック予防のためにわざわざ実家から持ち込んだ代物である。
どうでもいいが、白米と紅茶を同時摂取する勇気と書いて無謀と読む行為は緊急事態でない限りやりたくない、と思うである。異文化コミュニケーション。
最近では専ら口直しの道具になってきているがそこら辺はご愛嬌。
だって朝からむつこい物はヤダ。茶漬けでいい。寧ろ茶漬けが良い。
日本人に馴染みのあるこの緑色。
み ど り い ろ 。
確かによく考えると不気味な色である。
だって緑色。
「・・・何ならお湯に溶かすと火妖虫が出てくるカプセルならそこに」
「このままで頂こう。」
チッとが舌打ちをしたのはきっと気のせいだと思うことにしたスネイプである。
「それで、私に何のようだ。」
「あら、暇そうだったからお茶に誘っただけだけど?」
茶と一緒に出した栗羊羹を切り分け、口に運びながらはにっこりと笑ってみせた。
その笑顔にはっきりと眉間に皺を寄せたセブルスである。普通に失礼。
「貴様が何の用もなく人を呼び止めるとは思わないんだが?」
そのセブルスの言葉には一瞬目を見開いた後、にんまりと嬉しそうに笑った。
比例でセブルスの眉間の皺はどんどん濃くなっていく。
「御名答。」
よく解ってるじゃない、と。
ま、この私が何の用もない奴に茶菓子まで出すわけないわよね。
クスクスと笑う魔女にセブルスはちらと後ろを見た。
帰ろうかな、なんて思ってみたのである。
ドアには内側からだが鍵がかかっていて、それを視認した直後にコトンと湯呑みを置く音がした。
あ、なんか嫌な予感。
「時にミスター・スネイプ?獅子寮の愉快な仲間達の事をどう思ってるのかしら?」
「不愉快だ。」
森の愉快な仲間達。
通じなかったネタに多少がっかりしながらもはセブルスの言葉に、でしょうねぇ、と相槌を打った。
普段の彼らを見ていれば犬猿の仲なのだということが馬鹿でもわかる。
獅子寮の話をしたになのか、獅子寮の彼らになのか、どちらに向けられたのか定かではないが(おそらくはどちらもに、だろう)、は少しも怯まず次の言葉を重ねる。
寧ろ、にんまり笑顔を濃くして立ち上がった。
「そんな貴方にこれを差し上げようかと思ってね。」
ズイッと目の前に出された物体に思わず身を引くセブルス。
の瞳は爛々と輝いていて、瞬間セブルスは逃げ遅れたことに気がついた。
いや、最初からこの魔女の罠にどっぷりとハマっていたのだろうが、ここまで来たらどうやっても引き返せない。
盛大に溜め息を吐くことを忘れずに、セブルスは腹を括った。
この魔女の場合、断った方が馬鹿を見る。
手の内にコロリと落とされたものに目を向けてから魔女に視線を移し、説明を求めた。
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ちなみに私は朝からカレーとかでも全然いけます。←
2008/10/2
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