万事屋ビスタ
第3話 ホットケーキ
「これは―――食えるのか?」
卓を前にして、その上にででんと置かれた物を見て絳攸は思わずそう口にした。
万事屋ビスタ No.3
「ホットケーキですよ。甘くて美味しいんです。」
昨日、久々に小麦が手に入ったので。と言いながらパクリと翠はその一切れを口に運んだ。
うん、我ながら上出来。
そして目の前の青年を見る。
(―――まずかったかな。)
彩雲国にはホットケーキなんて横文字のモノなんてないだろうからなぁ・・・
の故郷ではお子様の3時のオヤツとして大活躍していたのだが。
いやでも今日の朝食は久々にホットケーキだキャッホイ!とテンション上々で昨日から決めていた事だこれだけは譲れないよなうん。
・・・食い意地張ってるなとか言ったら殴るぞ。
「―――美味いな。」
むんむんと善からぬ事を考えていると絳攸が言葉をもらした。
それにつられて顔を上げると。
(おお、笑顔だ。―――珍しい。)
仮にも“お得意様”にそう内心失礼なことを考えながらはにこりと頷き絳攸に1つの瓶を差し出した。
「でしょう。これ付けるともっと美味しいですよ。」
「―――食えるのかこれは?」
「はうちっ第ニ段ッ」
冒頭と同じことを聞かれ凹むである。
なんだなんだやっぱり赤いのは刺激が強いかでもコレ苺ジャムなんだいッ!
半自暴自棄になりながら自分のに苺ジャムをかける。
ついでに腹いせに目の前の絳攸のにもかける。
相手が焦ろうが何しようが知らんぷりするのがコツです。
「・・・・・・・・・。」
「・・・食べてくださいね。」
沈黙。
をも諸ともせずにニッコリ笑う。
後ろに何か黒いモノが見えたというのは某迷子後日談である。
「―――甘い。」
「そーでしょうそーでしょうとも!何たって砂糖奮発しましたからねッ」
うんうん、と満足そうには頷いた。
自信作らしい。
絳攸はそんなを見てニヤリと笑みを浮かべる。
「お子様向けだな。」
「カッチーンッ!」
「いやそれは口で言うもんじゃないだろう。」
肩を震わせて笑う絳攸にさすがに今のは子供っぽかったか思うツボだ、と居心地悪くケーキにがっつく。
眉間には不機嫌そうに皺が刻まれている。
そんなを見て絳攸は笑いを納めるとまたパクリと苺ジャムののったホットケーキを口に運んだ。
「俺は好きだけどな。」
「・・・そうですか。」
パクリと、口の中に仄かな甘さが広がった。
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第3話 ホットケーキ
今更ですがうちの彩雲国ヒロインはトリップ主です。
苦手な方は申し訳ありません。
…なーんかシメがいつも同じような感じになってしまう…
2008/01/18
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