万事屋ビスタ
第4話 紅男
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
なーんだろうなぁ。
この沈黙ぅー…
万事屋ビスタ No.4
断っておくが万事屋ビスタは庶民達が住まう商店街の片隅にあるわけで、貴族達が住まう所謂高級住宅地からは程遠い処にある。
寧ろ、子供が小銭握りしめて買いにくるような菓子類でなんとか生計をたてているわけで。
「・・・・・・。」
こんなやんごとなきお方がくる処じゃないんですけどーぅ。
は明後日の方向を向いて冷や汗を浮かべた。
目の前の紅い男。
誰だ。とりま紅家の人だよな何の用だこんちくしょう。
準禁色の赤を全身にまとっているこの男。
明らかに高貴な人じゃんお前来るとこ間違えてんじゃね?と彼がビスタの玄関に立った時、は思わず口にしそうになった。(因みに藍様は論外である。なんか史上最強に寛いでいらっしゃるから。)
もちろんそんな失礼なことは言わなかったけれども。
貴族の人にそんなこと言ったら死亡フラグが立ちまくることは目に見えている。
まだ死にたくはない。
(おぉ、高そうな絹だな・・・)
嫌味か。
一応茶も出したしやることもなくボーッと視線を男の服装に向ける。
・・・と、かなり凹んだ。
上質そうな絹、極め細やかな凝った刺繍、繊細な造りの扇子。
それは衣一着を何日も着回したり見かねた近所のおばちゃんに恵んでもらってたりする私に対する嫌味としか思えんのだが。
とりあえず今日は着替えててよかった。
「―――アレが世話になったそうだな。」
「―――は?」
突然の物言いに小首をかしげる。
アレって誰だ。
「帰ってこないと思えばこんな処で寛いでいるとはな。彼奴もお盛んなことだ。」
フンッと笑う紅い人。
・・・えーと。
「もしかして、絳攸さんのことですか?」
帰ってこないってことは泊まってったってことで。
ちょっと違うがビスタに泊まったことがあるという人物は絳攸しかいない。
え、もしかしてこの人、話に聞く子猫まっさかりの絳攸さんを拾ったっていう養い親かッ!?
うわお、紅家の人どころか当主さんかますます何の用だッ?!
は目眩を覚えた。
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第4話 紅男
因みに一応出した茶はまごうことなき粗茶である。
2008/01/21
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